この度は、南高栄誉賞という大変名誉な賞をいただき、ありがとうございます。甲府を離れて29年になりますが、南高校は今も懐かしく、このような形で帰郷できることは大きな喜びです。このお知らせを頂き、改めて南高校のホームページを訪ねてみますと、そこに懐かしい「フロンティアスピリット」の言葉と共に素晴しい施設を備え発展し続けている母校の姿を見出し、これまたとても嬉しい再会でした。
今回評価していただきました猿橋賞は、27年前に気象研究所を退官された猿橋勝子博士が「女性科学者に明るい未来をの会」を設立し、女性研究者が伸び伸びと自然科学研究を推進していくことを応援するために設けた賞です。私の受賞タイトルは「熱帯における雲分布の力学に関する観測的研究」です。エルニーニョでも分かるように、熱帯域の雲や雨の分布は私たちの住む中緯度域の気候にも大きく影響します。しかしながら、それを決める要因についてはまだ分からない部分が多く、現在の気候モデルを用いても、雲や雨を十分正しく再現することは困難です。私の研究は、一見ランダムに湧き上がるように見える熱帯域の雲が実は力学に基づいたある規則性を示していることを示したものです。
現在、私は東京大学気候システム研究センターで、熱帯気象と気候との関係について大学院生と共に研究しています。気候センターの一つの大きな課題は地球温暖化研究です。温暖化が進むと実際に何が起きるのか。それをより正しく予測して人々に伝えることができるようになるため、私たちは日々研究に励んでいます。研究に使命感が抱けるのは幸いなことです。しかし、研究という果てしのない仕事を続けていくには、それ以上に研究対象が本当に面白く、研究に愛着をもてることが何より大切です。自然の仕組みに興味を持ち解明していく面白さを知る心は、伸び伸びとした環境で育まれると思います。
振り返ると、南高で過ごした日々、私は女だから進みにくい道があるという先入観を与えられる経験はしませんでした。若い当時は当然のことと思っておりましたが、今、世の中を見回しますと、大変恵まれていたことだったように思われます。高校3年生の最後の緑陽祭でサモトラケのニケ像の張りぼてを作ったこと。その時の友人のしぐさに皆で笑いさざめいたこと。思い返すと本当に豊かな高校生活を送らせていただきました。
栄誉賞にお選びくださったことに心から感謝申し上げますと共に、南高のますますのご発展をお祈りして、筆を置かせていただきます。
第13期卒 東京大学 気候システム研究センター 高薮 縁