このたびは、各界でご活躍の方々に受賞されている南高栄誉賞を、思いもかけず賜る次第となり、恐縮いたしておりますとともに、この上もなく名誉なことと感謝しております。先日の日本古典文学会賞の受賞を、このようなかたちで多くの同窓の皆様にお祝いしていただきますのは、大変嬉しいことでございます。
この賞は、財団法人日本古典文学会が、年に一度、上代から近世までの日本古典文学を専攻する若手研究者の前年度の実績を審査して数名に与えるもので、本年で二十九回を数えました。昨年の拙稿二本(「大田南畝『七観』をめぐって――詩文と戯作」『文学』隔月刊第三巻第三号、岩波書店、「江戸における点取り狂歌の発達」『国語と国文学』第七十九巻第十号、東京大学国語国文学会)およびささやかな編著(『吉原狂歌本三種』、太平書屋)を評価いただき、多くの若手研究者の中から選ばれてこの由緒ある賞の栄誉を与りまして今はいよいよ身の引き締まる思いがしております。
昨今の厳しい経済状況を反映した実学志向の中で、人文科学は危機的な状況にあるのが現実です。が、人間の根本を支える文化や思想はないがしろにはできるものではありません。民族や宗教をめぐる対立、文化や価値観の相違から来る摩擦など、世界各地から私たちの暮らす日本社会の隅々まで、さまざまなところで起きている深刻な問題の多くは、人文科学の領域に起因していると言っても過言ではないでしょう。人の移動や物品の流通、情報の氾濫によって否応なしに国際化した現代日本社会においては、各人が、自ら生きる文化をより深く知ることによって、その価値観や考え方を相対化することがいよいよ求められているのではないでしょうか。こうした状況に貢献することこそが、日本文学・日本文化の研究の使命だと考えております。今後も、こうした問題意識を深め、研究をすすめてゆくことを決意いたしまして、御礼の言葉に代えさせていただきます。
第27期 小林 ふみ子